あなたは平成の体育館を持ち歩いている!【面白シリーズ Vol.10】

2020年の通信技術者にスマホをみせたら?

もしも現代のスマホを「ガラケー(FOMA)時代の技術」で再現したら?

(2026/06)

コミカルなFOMA携帯電話のイラスト

私たちが毎日ポケットに入れているスマートフォン。もし、この「現代のスマホ」と全く同じ性能の端末を、1992年に登場したドコモ「iモード」や2001年からの「FOMA」全盛期の技術だけで作ろうとしたら、一体どれほどの大きさになるでしょうか?


「性能を1ミリも落とさない」という前提のもと、当時の電子部品のスペックから、その驚くべきサイズを大真面目に考察してみました。

1. 画面の予測:映画館のスクリーン並みの巨大ガラス板が必要?

現代のスマホ(iPhoneなど)の画面は、人間の肉眼ではドットの粒が識別できないほど超高精細です。しかし、FOMA初期~中期の標準的な画面(メインディスプレイ)は「QVGA(240×320ドット)」という非常に粗い画素数でした。


同じ2.2インチ程度の画面サイズのまま、現代のスマホ(例:2556×1179ドット)と同等の高画素数を当時の技術で再現しようとすると、ドットの大きさを小さくできないため、画面をそのまま外側へと広げていくしかありません。


【画面サイズの予測】

計算上、当時の液晶パネルの画素密度のまま現代スマホと同等のドット数を並べると、画面サイズはなんと約20インチ~25インチ(小型の液晶テレビ並み)にまで巨大化します。

ポケットに入れるどころか、両手で抱えて持ち運ぶ看板のようなサイズになってしまいます。

2. 頭脳(CPU・メモリ)の予測:タンス並みの巨大なサーバーケース

スマホの頭脳(プロセッサ)の進化は、この20年で最も狂気的なレベルに達しています。


現代のスマホに使われている LSI チップは「数ナノメートル」という原子レベルの細さで回路が彫られており、1つの小さなチップに 100 億個以上のトランジスタが詰まっています。


これを分かりやすく例えると、学校の体育館レベルの広さ(10M×20M程度)の床に、幅1mm程度の細さで回路図を書くレベルです。

対する FOMA 時代の CPU(数百メガヘルツ駆動)の半導体製造プロセスは、現代の 100 倍以上粗い世代でした。


さらに、現代のスマホ並みの処理速度(ギガヘルツ級のマルチコア)と、数ギガバイト(GB)に及ぶメモリ容量を、当時の半導体チップを物理的に並べることで「力技」で再現しようとするとどうなるでしょうか。

【頭脳サイズの予測】

チップの面積、基板の配線スペース、そして当時のチップが放つ膨大な発熱を冷やすための冷却ファンなどを考慮すると、頭脳部分だけで事務用のタンス(または大型のデスクトップPCサーバー)1台分の筐体が必要になります。

3. バッテリーの予測:原付バイクのバッテリーを「何個も」積むハメに

仮に、テレビサイズの画面と、タンス並みの頭脳を当時の技術で動かせたとしても、次に最大の壁となるのが「電気(バッテリー)」です。


前述の通り、当時の目の粗い半導体や液晶バックライトは、現代の省エネ技術に比べて恐ろしいほどの電力を消費します。そんな大食いモンスターを「現代のスマホと同じように、丸1日連続駆動させる」ためには、当時のリチウムイオン電池のエネルギー密度では完全に容量が足りません。

【バッテリーサイズの予測】

現代のスマホと同じ駆動時間を当時の電池スペックで満たすには、原付バイクや自動車に使われるような巨大なバッテリーケースが数個、あるいはそれ以上必要になります。

重量だけで数十キログラムに達し、人間が一人で持ち上げることは不可能です。

4. 【結論】通信速度まで同等にすると、それはもはや「移動式ロケット」

軽トラにスマホを積んで走るコミカルなイラスト

最後に「通信速度」です。

FOMAの3G通信速度(初期は384kbps)から、現代の5Gや光回線並みのスピードを当時の無線技術(高周波部品、巨大なフィルター回路)で再現しようとすると、端末の周りには何本もの太いアンテナと、電波を処理するための高周波ユニットが、さらに軽トラック1台分ほど必要になります。


これら「画面」「頭脳」「電池」「通信」の予測をすべて合体させると、驚きの答えが導き出されます。

専門家視点によるサイズ予測の結論:

FOMA時代の技術で、現代スマホと『全く同じ性能』の端末を無理やり作ると、その大きさは「大きめの自動販売機」から「軽トラック」並みのサイズになり、重量は数百キログラム~1トン近くに達してしまいます。

持ち歩くにはフォークリフトや専用の台車が必要になり、もはやモバイル端末ではなく「移動式の通信基地」そのものです。

まとめ:私たちがポケットに入れているスマホは「20年前なら奇跡」

私たちが普段、何気なく「画面がちょっと小さいな」「電池が1日しか持たないな」と不満を言っているスマートフォン。


しかし、技術仕様(スペック)の視点から歴史を逆算すると、それは「わずか20年前なら、自販機や軽トラック並みの巨体でしか実現できなかったはずの怪物の性能を、衣服のポケットに収まる150グラムのガラス板にまで圧縮した」という、人類の執念が生み出したとんでもない結晶なのです。


この圧倒的な進化の事実に気付くと、端末に流れてくる通信回線やWi-Fiの『スペック』を正しく選ぶことが、どれほど未来の快適さに直結しているかが、より深く見えてくるはずです。


【筆者プロフィール】

アナログ・デジタル総合種 工事担任者。
昭和40年代の「ラジオ・アマチュア無線少年」としての自作文化を原点に、端末設備の設置や外線工事、地下マンホール内での通線作業、果てはPHSの基地局設置など、日本の通信インフラの現場を最前線で支え続けた専門家。趣味はオーディオとフィッシング。現在は、当時の泥臭い現場の知恵を交えながら、現代の「通信の裏側の驚き」を一般ユーザー向けに分かりやすく解説するシリーズ記事を執筆中。

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